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出逢いは、街中を熱気が包む、真夏のある日。
姉の恋人として紹介された彼の第一印象は、真面目な好青年。
姉にしては珍しいタイプを選んだと思った。
俺様色の強い歴代の彼氏を思い出せば、その差は歴然としていた。
落ち着いていて、どんなことがあっても姉を受け止めてくれそうな印象があった。
「二人とも、お茶いれるから待っててー」
「うん……えっ!?」
二人の未来を想像している途中に姉の声がして頷いたけど、やばいと思った私はスキップでキッチンに向かった姉に詰め寄った。
「美波ちゃん、何考えてるの?」
「何って、お茶……」
もちろん、小声のやり取りで、姉の彼氏――結井(ユイ)さんには聞こえていない。
「美波ちゃん、悪いことは言わないから、向こうで待ってて。私がやるから」
「お茶くらいいれれるよ。南里は、久志(ヒサシ)くんの相手してて」
「ちょっ、美波ちゃ……」
背中を押され追い出されてしまい、仕方なく待つことにした。
甘えることに関しては天才的だけど、姉は家事が全くできない。
満足にお茶をいれることもできな程、不器用な人なのだ。
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