【3】接近

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  「ねぇ、南里、バイト先って久志くんの会社のすぐ側でしょ。久志くん最近忙しいって残業してるし、送ってもらったら?」 「美波ちゃ、何言って……。結井さんに悪いよ」  二人きりで食事したことがこんなにも引っかかっているのに、姉の公認のもと結井さんと二人の時間が増えてしまったら、見ないフリしている気持ちから背を向け続ける自信なんか、ない。  私が結井さんを好きになる可能性はないという自信があるのか、姉はおもむろに携帯を取って電話をかけはじめた。 「美波ちゃ……!」 「しーっ! あ、久志くん? 南里に言ったよ。それでね、あたしも心配だから、南里を送ってくれる? うん、うん……、わかった、言っとくね。今日はどうする? ……そっか、残念。じゃ、またね」  私の意見を聞かないまま、勝手に話は進んだ。  姉は平気なんだろうか。  人一倍ヤキモチ焼きで、独占欲も強いのに。  遅くに帰るのなんて、今に始まったことじゃない。  今まで付き合った彼氏にこんなこと頼むなんてなかった。 「美波ちゃん、私、大丈夫だよ」
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