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「何言ってるの、街中の居酒屋なんだし、いつ酔っ払いに絡まれるかわからないんだから。久志くんも心配だから送るって言ってたし、甘えなさい。何かあってからじゃ、遅いんだから」
姉が、珍しく姉らしいことを言っている。
家族として心配してくれるのは嬉しいけど、素直に喜べない。
「うん……」
これ以上強く断ったら、変に思われると思うと、頷くしかなかった。
「いつも先に寝ちゃうけど、心配してるんだよ」
「うん、ありがと……」
結井さんと偶然会ってから数日。
あの日から私は姉をまともに見れない。
姉の嫉妬を恐れて、後ろめたさを拭い去れずにいた。
言わなければバレないこととわかっているけれど、忙しさに紛れて忘れていた罪悪感は、姉と顔を合わせるたびに確かなものとなっていった。
二人がつき合い始めて三ヶ月を過ぎた。
姉は、どんなに長くても今までもって二ヶ月だった彼氏とのつき合いを一日ずつ更新している。
始めの頃の熱はないものの、幸せだから、なのか、余裕さえ感じる。
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