【3】接近

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   いつものように店を出て、携帯を開けば、必ずメールが一件届いている。 「もしもし、今終わりました」 『お疲れ。駐車場にいるよ』  裏に回って見渡すと、チカチカとライトをつけて、結井さんは、ここだよと合図する。 『乗って』 「お邪魔、します」  迎えに来てもらうことに未だに慣れずに、遠慮がちに乗り込む。  シートベルトを締めたのを確認すると、車はゆっくりと発進した。 「今日、早かったんですね」 「今日の分は、ね……。明日はいつ終わることか」  暗くてよく見えなかったけど、溜め息混じりの口調は私より疲れていた。 「ごめんなさい……」  本当は、早く帰って休みたいはずなのに。 「気にしなくていいよ」  言いながら少し窓を開けると、結井さんは煙草に火を点けた。 「でも、大変でしょ……? 美波ちゃんの我が儘につき合って、私まで……」  俯くと、結井さんは私の頭をぽんぽんと撫でる。  その手が優しくて、気にする必要はどこにもないんだよって言ってるみたいだった。
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