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いつものように店を出て、携帯を開けば、必ずメールが一件届いている。
「もしもし、今終わりました」
『お疲れ。駐車場にいるよ』
裏に回って見渡すと、チカチカとライトをつけて、結井さんは、ここだよと合図する。
『乗って』
「お邪魔、します」
迎えに来てもらうことに未だに慣れずに、遠慮がちに乗り込む。
シートベルトを締めたのを確認すると、車はゆっくりと発進した。
「今日、早かったんですね」
「今日の分は、ね……。明日はいつ終わることか」
暗くてよく見えなかったけど、溜め息混じりの口調は私より疲れていた。
「ごめんなさい……」
本当は、早く帰って休みたいはずなのに。
「気にしなくていいよ」
言いながら少し窓を開けると、結井さんは煙草に火を点けた。
「でも、大変でしょ……? 美波ちゃんの我が儘につき合って、私まで……」
俯くと、結井さんは私の頭をぽんぽんと撫でる。
その手が優しくて、気にする必要はどこにもないんだよって言ってるみたいだった。
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