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「南里には、昔の恥写真披露したから、お兄さんは気が楽なんですよ」
私の気持ちを少しでも軽くしようとする結井さんの気遣いが、なんだか痛かった。
負担にならないはずないのに。
無理なら無理って言って構わないよ。
思い浮かべた言葉は、声になることなく喉の奥に消えていった。
結井さんの気持ちじゃなくて、自分の気持ちを優先してる。
期待しても無駄ってわかってるのに、ほんの少しの間でも一緒にいられるなら、このままがいい……なんて。
思いながら、気持ちを押さえ込む。
「結井さん、あんまり美波ちゃんを放っておいたら、愛想尽かされるんだからね」
「はい。重々承知してます」
「わかればよろしい」
大きく頷いて、私自信納得しようとした。
私の口から結井さんの厚意をはねつけることはできない。
いっそ、こんな小さな気持ちで揺れ動くことがないくらい諦めのつく現実があったら、少しは楽なのに。
「可愛いな、南里」
「お世辞言ったって、何も出ないよ」
「お世辞じゃないよ」
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