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「南里、痩せた?」
駐車場で待っていた車に乗り込むと、結井さんは頬に触れながら私の顔を覗き込んだ。
頭を撫でられることは何度かあったけれど、頬に触れられるとは思わなくて、一瞬、身体が強張った。
「そう、かな。忘年会とかあるから、忙しくて……」
「ちゃんと眠れるか?」
「う、うん……」
心配そうに見つめてほしくなくて、造り笑いを浮かべた。
朝、大学に行って、夕方、真っすぐバイトに行って、結井さんに送ってもらう毎日が半月ほど続いて、そのサイクルには慣れたけど、考え事ばかりしてる。
このまま結井さんに甘えていいのか、とか、二人きりの時間を重ねて、姉に対する罪悪感が色濃くなってしまった、とか……。
何より、姉の恋人に密な恋心を抱いていると認めざるを得なくなって、悩み続けて、夜も眠れない。
答えが出ない考えを巡らせたまま朝を迎えて、胸が苦しくて、何日かまともに食事してない。
自覚してしまった想いを、胸の中で確認しちゃいけなくて。
思っていても、決して口にしてはいけない。
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