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考えるほど深みにはまるってわかっているのに、止められない。
押さえつけて、なかったことにしようと思うほど想いは比例して、その反動が苦しみに変わる。
こんな短い間でさえ、一緒にいるのが苦しいと感じるようになったのは、いつからだろう。
同じことを考えすぎて、わからなくなっていた。
「気持ち溜め込むのは身体に毒だぞ」
何気ない言葉も、結井さんの言葉だと胸に刺さる。
横にいる人は、私に特別な感情を抱いたりしない。
手に入らないとわかっていながら、欲しいと思ってしまう。
大丈夫、という言葉が、喉元で詰まる。
足場のない所まで追い詰められる錯覚。
結井さんの一言一言が意志に関係なく心の奥深くに入り込む。
その優しさは、凶器でしかなかった。
結井さんの言葉に何の反応も返せず、私は俯いたまま安全運転してくれる車に揺られていた。
「南里、ちょっと待ってて」
不意に人気のない小さな公園に車を停めると、結井さんはポケットを探りながら出ていった。
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