【3】接近

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   一言でも発したら、止められなくなる。  引き返せなくなる。  逢うたびに。  話すたびに。  笑うたびに。  こんな、沈黙でさえ。  考えている。  この人が、誰のものでもなければいい。  美波ちゃんなんか……。  思い浮かべてしまったことに、息を呑んだ。  何、考えてるんだろう。  私、いつからこんな嫌な奴になってた……?  嫉妬……してる。  息が詰まる。  胸中で渦巻く想いは、口にすることはできなくて、口唇を噛んだ。  こんな汚い感情、気づきたくなかった。  隣りにいるのが結井さんでなければ、吐き出せたのに。  言葉にできない代わりに、視界が揺れた。  堪えきれずに、その一粒が手に零れた。 「南里」  そんな優しい声で、名前を呼ばないで。  困らせるつもりなんてないのに、止められない。  滴が窓を叩く。
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