【3】接近

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   気持ちごと、この雨に全て流れてしまえばいいのに。  みっともなく泣く姿を見られたくなくて、顔を逸らし、声を殺した。 「南里」  この現実が、夢であればいい。泣いて目覚めても、傍にいなければ、安心できるから。  けれど、その手は私の髪を撫でながら宥める。  リアルな悪夢。  縋ることなんてできるわけがないに。  なのに。 「気がすむまで、泣いていいよ」  緩やかに引き寄せられる。それが当たり前だと言うように。  背中に回された手が、温かくて。  拒絶、できない。  この一瞬だけ。  今だけ、この腕も、優しさも、自分だけのものだと思えば、少しは苦しみが和らぐだろうか。  今だけ、寄りかかれば、募る想いを預けたなら、答えは出るだろうか。  そんな想いを浮かべて、背中に回しそうになった手を口元にあてて、零れる声に蓋をした。
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