【3】接近

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   抱き締められても、抱き締め返せない。  私の腕が背中に回るのは、罪。  越えられない壁は、頂上が見えないほど高く、果てしない。  痛くはないのに、押し潰されそうなほど苦しい心。  彼は、私を慰めながら、傷つける。  別な誰かのものだったなら、少しは楽なのに。  本当に、美波ちゃんのこと、好き…――?  聞けない。  押し込めた本音まで言ってしまいそうだから。  深く息を吸い込むと、さっきまで漂っていた煙草と、香水のほのかな香りがした。  滲む視界の中、白い花びらがガラスに舞い降りて、街灯に照らされてキラキラ光っていた。  一年の終わりが近づくこの日、好きな人の腕の中で初雪を見た。  
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