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あの日から数日、迷惑になるから送ってもらうのをやめようと切り出したら、現実を思い知った。
「南里はいいのよ。妹だもん。近い将来本当の妹になるんだもん、遠慮しないの」
その言葉の意味を理解したくなくて、笑ってごまかした。
息もできない苦しさが襲って、その後、何を話したか覚えていない。
いつか。
そればかりが巡って、姉に気づかれないように、想いを呑み込んだ。
闇に閉ざされた現実の中で、未来など見えない。
「南里、いつまでテキスト開いてんの」
「へ……? あ、うん……」
講義室の時計が、カチリと動いて十六時を告げる。
鐘の音を聞いてようやく思考が現実に戻った。ただっ広い室内を見渡して、呆れた顔で見下ろす親友を見上げて、何時間も同じことで悩んでいたことに気づいた。
ほんの十分考えていたつもりが、一日の四分の一を考え抜いていた。
答えは、出ない。
ノートは真っ白なまま、その角を黒い線が泳いでいた。
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