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「冬子、大好き」
「女に告られても嬉しくない」
「素っ気なくても、好きだもん」
「はいはい……。ほら、バイトあるんでしょ。早くしないと遅刻するよ」
「うん」
本当は、バイトは休み。
一週間のうち、結井さんに会えない一日。
それが淋しくないと言ったら、嘘になる。
まだ、苦しさの方が勝っていて、顔を見ただけで泣いてしまいそうになるから。
だから、会えなくていい。
会えなくて…――。
冬子と別れて、目的もなしに街をぶらつく。
この間、雪が降ったのに、冬の影は息を潜め、穏やかな陽気が続いていた。
けれど、日毎冷えていく乾いた空気は、針のように頬を刺した。
その鋭い痛みが、心の傷みと重なる。
あの時、結井さんは何を思って私を抱き締めたんだろう。
同情?
友情?
愛情……?
そればかりが巡る。
「あれ、南里じゃん。一人?」
背後の声に鈍く振り返ると、同じバイト先の美和ちゃんがいた。
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