【4】重症

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  「うん、真っすぐ家に帰るのも…って思って。美和ちゃんは、これから?」 「そうなんだけど、早く来過ぎちゃって。時間あるならさ、ちょっとつきあって」 「うん」 「マック行こうか。奢るよ。なんか食べた?」 「学食、寄ってきたんだ」 「そか。つきあわせちゃうし、飲み物だけでも選んで。ささやかなお礼だから」  人懐っこい笑顔を向けて、美和ちゃんは厚底ブーツを鳴らしながら大股で店内に入っていく。 「何にする?」 「ん…、アイスティー」 「オッケー。えっと……」  空いたカウンターで注文する美和ちゃんの声は店内に響き渡った。 「お待たせー」  窓際の席を陣取って、座ったと同時、二人して、ふぅと息をついた。 「いただきますね」 「あ、どぞどぞ」 「どもども」  笑い合って、窓の外に目を向けると、チラチラと雪が降り始めた。 「冬ですね、南里さん」 「えぇ、そうですね、美和さん」  美和ちゃんと話す時、いつもこんな感じのノリだけど、口調とは裏腹に、表情が緊張していて、顔を覗き込むと、美和ちゃんは手に持ったハンバーガーをトレイに戻して姿勢を正した。
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