【4】重症

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   自動ドアが開くと、冷たい風が吹き込んだ。  身を竦めて隣りのコンビニに逃げ込む。  新しくオープンしたばかりの店内は、どこもかしこも綺麗で、品物は他と同じなのに、新商品のように思えてしまう。  本格的な冬を目前に、おでんと肉まんの割引セールが思わず目を引く。  他に何かないかレジを通り過ぎて、色々眺める。  視線を巡らせて足を一歩踏み出すと同時、ポケットの中でバイブ音が響いた。  サブディスプレイに表示された名前を見ただけで、鼓動が大きく跳ねた。  目の前にいるわけでもないのに息が上がって、ドキドキしながら画面を開く。  件名にはRe:がたくさん並んで、本文には、不機嫌な顔文字がぽつり。 「ぷっ……」  コンビニにいることも忘れて吹き出して、慌てて口を噤む。  時刻は、十九時半を少し過ぎていた。  まだ会社? 終わらないの?  送信ボタンを押して、カゴに缶コーヒーとサンドイッチを放り込む。眠気覚ましに、ガムと……。 「いらっしゃいませ」 「マルボロのボックス一つ」  財布を取り出しながら、迷っていた。
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