【1】はじめまして

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   高校時代につき合っていた彼には、いつも可愛くないと言われて、その度に卑屈になった。 「ねぇ、久志くんて、南里のタイプじゃない?」 「何、言ってるの。優しいお兄さん、くらいにしか思ってないよ」 「ふーん」  気のない返事をしながら、姉は雑誌をパラパラとめくっていく。  平静を装いながら、焦る心。  鼓動が速まっているのは、図星を指されたせい。  まさか、そんな筈、ない。  脳裏を過ぎった結井さんの優しい笑顔に、息を呑んだ。  ジワジワと侵食されるみたいで、心がざわついた。  きっと、気のせい。  初対面だし、あの人は姉の恋人だと、わかりきった事実を心の中で呟いて、蓋を閉めた。  カタカタと音を立てて、やがて、静まる。  思い出したりしなければ、口に出さず、態度にも出さなければ、自由にそよぐ風のように通り過ぎていくから。  間違いと言い聞かせて、心の深い場所に、僅かな想いを閉じ込めた。  
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