単純で、でも大切な約束

4/6
前へ
/14ページ
次へ
お姫様みたいだった顔が、今はすっかり王子様みたいで。 私は胸がドキドキした。 「約束だ」 男の子がもう一度そう言うと、私のドキドキがまた大きくなる。 私は頷いて、続く言葉を待った。 男の子は一瞬恥ずかしそうに唇を噛んだけど、決心したように私まっすぐに見つめると、こう言った。 「“また会おう”これが約束だ」 「また、会おう?」 私は首を傾げる。 男の子は頷いた。 「貴様と僕は今、いつかまた会う約束をしたんだ」 「……? うん」 私は意味がわからなくてますます首を捻ってしまった。 男の子は溜め息をついて、私のほっぺを強めに挟み込んできた。 「つまりはこうだ。 僕と貴様がいつかまた会う約束をした。 と言うことは……」 「あ」 ――わかった。 わかった瞬間、目からまたぽろぽろ涙がこぼれてくのを感じた。 雨に当たってるのに、体がじんわりあったかくなる。 「私は」 声が震えた。 「私は、いつかまたあなたに会うまで……壊れちゃいけないんだ」 確かめるように私が男の子のお月様みたいな目を見ると。 男の子はまたお姫様みたいに綺麗な笑顔で頷いていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加