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――その場に倒れ込んだ泥だらけの少女を横抱きにすると、僕はそっと彼女の額に貼りつく茶色の前髪を手で分けてやった。
「…………」
「珍しいですね、あなたが人間を気にかけるなんて」
どこからか聞こえてきたからかいを含む声に、僕はうんざりしたように言った。
「ただの気まぐれだ」
――僕は自分と同じくらいの歳であろう幼い少女に少し興味がわいた。
泣いているのを見た。
なんとなく胸がざわついた。
「ふーん……」
「いいから帰るぞ」
僕は少女を近くの草の上に横たえると、マントをふわりと翻した。
体が違う空間にとけ込むように消えていく。
最後に見たのは……
少女の安らかな寝顔だった。
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