ある雨の日

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何で、私…… お母さんから逃げてしまったんだろう? 全部私が悪いのに―― ---------------------- 「旦那様は……残念ですが」 真っ白なベッドの上で目覚めた時、お医者さんがお母さんにそう言っているのを見た。 お母さんが床に座り込んで泣いている。 (お母さん。) そう呼びたいのに、泣かないでって頭を撫でてあげたいのに。 お医者さんの言葉が、お母さんの泣き声が頭をぐるぐる回って、声が出ない。 (お母さん。 お母さん。 お母さん。) ――泣かないで…… 「おかあ、さん……」 ようやく声が出た。 お母さんが振り返る。 目が真っ赤だ。 いつも笑ってる顔が、涙でぐしゃぐしゃになって…… 「……お母さん」 もう一度呼ぶと、お母さんはゆっくりと立ち上がった。 フラフラしながら私のそばへ来てくれる。
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