単純で、でも大切な約束

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「貴様、何故泣いてるのだ?」 そう私に聞く男の子は、まるで物語に出てくる王子様のようなマントをつけていた。 雨に濡れた真っ黒な髪に、髪の間から私を見る……お月様みたいな金色の目。 ――私やあの人とは全然違う。 どうしてかわからないけど、そう感じた。 「質問に答えろ。 何故こんな場所で泣いている?」 もう一回、男の子が私に聞く。 ――なんでそんな事が知りたいの? そう思ったけど、私は 教えてあげることにした。 「……お父さんを、大好きなお父さんを……“壊し”ちゃったの。 だから、お母さんが私を……」 “壊そう”とした。 そこまで言ったら、今度こそ泣いちゃいそうで、私はぐっと我慢する。 そして、ぽつりと呟いた。 「私が壊れてたら、お母さんは泣かなかったのに」 「そうなのか?」 「そうだよ」 男の子に私は頷いてみせる。 壊れたのがお父さんだから、あの人は私を大嫌いになった。 お父さんもあの人も、もう私を見てくれない。 そんなこと、子供の私にだってわかることだ。 「……私も」 私にはもう………… 「壊れちゃえばいいのに」 何もない。
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