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「何もないのか?」
「……うん」
「だから死にたいのか?」
「……うん」
「そうか」
「……うん」
頷く事しかできない。
――だってその通りだし、仕方ないことだから。
私は何となくまた、すぐそばの水たまりを覗き込んだ。
――お父さんと同じ、藍色の目からはぽろぽろ涙が落ちている。
泣いちゃだめって言ったのに。
溜め息をついて、泥だらけの手で目をゴシゴシ擦ってたら。
「じゃあ……僕がそれを与えてやろう」
「え?」
私はびっくりして顔を上げる。
男の子はにっこりと笑ってた。
すごくきれいで、王子様みたいな格好なのに、お姫様みたいに見えた。
「僕が貴様と“約束”してやる」
「やく、そく?」
「そうだ」
男の子は頷いて私の前にしゃがみ込むと、私のほっぺを両手で包み込んだ。
「約束だ」
私は、男の子から目を離せなくなった。
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