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「アンタ男を見る目はあるみたいねぇ~?顔良し、運動良し、性格良しときた上に人気者だし…モテる条件全部揃ってるじゃない。ちょっとばかし身長足んないけど‥まあ成長期だから今後に期待すればいいし、ね?」
「わ、私はそういうつもりじゃ…」
長々と演説する小春に苦笑いしながら莉音は返した。
そう、“好き”かどうかは解らない。ただ、一至は莉音の背中を押してくれたのだ。意地を張って聖を帰そうとした自分を。自分と同い年なのにどうしてそんなに器が大きいのか莉音は気になっていたのだ。
「見つめる位なら話しかけてくればいいのに~」
「い、いいよ…別に‥」
「高梨~、ちょっと来てよ?」
「!」
人の話を聞かずに小春は一至に声を掛けた。莉音はうつ向いてしまったのだが、内心物凄く焦っていた。
(ど、どうしよう…入学式の時以来まともに話してないのに‥小春のばかぁ…っ‥)
「呼んだ?」
「隣の席のよしみであたしの小学校からの友達紹介してあげようと思ってね?」
「何で上から目線なんだよ、お前」
「あら不満?」
「いえいえ女王様、めっそーもございません?」
「話の解るヤツは割と好きよ?」
「そりゃどーも」
莉音がうつ向いているせいか、一至は小春が誰の話をしてるのかわかってないようだった。莉音はどうしていいか解らずキュッと唇を噛み締めた。
「葉山さーん、先輩が呼んでるよ?」
「へっ?」
救いの声だと莉音は思いそのまま呼ばれた教室の出入口へとパタパタ走っていった。伝言を伝えてくれたクラスメートに言付けを聞くと少し眉を潜めて莉音は教室を出ていった。
「あーあ…逃げられちゃった」
「お前‥わかっててやってないか?」
「何が?莉音がアンタを気にしてるって事?自意識過剰ねぇ?」
「ちっげぇよ!…アイツって人付き合い苦手そうなのに‥友達に紹介とか、さ?」
莉音だという事に気付いていたのかバツが悪そうに一至は呟いた。
「あたしはイイ傾向だと思うのよ。だって入学式の時の莉音ときたらアンタの話ばっかでさぁー‥ちょっと妬いたわ」
「女に妬かれてもな」
「アンタと友達になりたがってるよ、あの子」
「それはお前が言う事じゃないだろ?」
苦笑いして一至が返すと小春はため息を漏らして呟いた。
「アンタに莉音の昔話してあげる」
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