“彼女”という人。

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「終わったな?」 「あ、あのっ‥高梨くん…大丈夫、なの‥?」 「何が?」 「だってあんなウソ…」 「大丈夫だって、あの先輩達本当に調べるわけじゃないだろ?」 「でもっ‥」 先輩達の気迫を身をもって体験したのか莉音は心配そうに一至を見つめた。 「──その点なら大丈夫よ、私が貴方をスカウトするから」 唐突に聞こえた声に二人が振り返ると長い黒髪をなびかせた美人なお姉さんがそこにいた。その人を見て一至は慌てて頭を下げた。 「い、飯塚先輩っ!おはようございますっ」 「授業中にそんな挨拶しなくったっていいのよ、高梨くん?」 「先輩に会ったら挨拶ってルール守っただけですっ」 「頭を上げて?今から話をするのにそれだと何だかつまらないわ?」 にこっと飯塚と呼ばれた先輩が笑うと一至はおずおずと頭を上げた。 「話って葉山に…ですか?」 「もちろん」 「先輩、今日会ったばかりですよね?」 「ええ」 「──何を話すって?」 「だからスカウトするって言ったでしょ?」 そう言うと莉音に向かってにっこりと笑った。あまりに突然だったので呆気にとられていた莉音だったのだが微笑まれて慌てて深々と頭を下げた。 「はじめまして、葉山さん?私は男子バスケット部の唯一のマネージャーの飯塚琴乃(いいづかことの)っていいます。今後ともよろしくね?」 「え?あ、あの‥?」 丁寧に挨拶されて莉音はどうしていいか解らずにきょとんとした。 「貴方に男子バスケット部のマネージャーになって欲しいと思ったの──ダメかしら?」 「えっ?わ、私が…ですか?」 「貴方に決まってるじゃない‥それにさっき高梨くんがあの子達に言ってたでしょ?」 「あれはウソも方便というか…諦めて貰うためについたウソですよ?」 莉音に代わって一至が返事をした。まさかこの先輩に聞かれてたとは。 「先輩…もしかしてずっと聞いてました?」 「ずっと?」 「葉山がここで先輩に囲まれてる時の話ですっ!」 「あの3人私と同じクラスなの…朝のホームルームで自習って聞いた途端3人揃ってどっか行っちゃったからクラス委員として見逃す訳にはいかないでしょ?」 「‥それがスカウトに繋がるんですか?」 「ウソに協力しようと思って」 琴乃はにっこりと笑って言い放った。
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