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授業がもう半分終わっているようなので二人はこのままサボる事にした。階段で座ってぼんやりとして時間を過ごす。ふと思いついたのか莉音が口を開いた。
「高梨くん、バスケ部の事教えて…?」
「いいけどまだ俺…入ったばっかだから微妙だぞ?」
「高梨くんから聞きたいんだよ?」
じーっと頼られるように見上げられまたあの鼓動が波打つのを感じたのだがそれを抑えるかのようにふるふる首を振って一至は語りだした。
「今男子バスケ部の人数は先輩だけなら20人位。1年は仮入部に来てるのは10人位かな?で、俺の従兄弟が今部長やってるんだ」
「そうなんだ…じゃあ部活楽しい?」
「もちろん!やりがいがあるしな?でも基礎練習で音を上げてるヤツとかいるから辞めてくヤツもいると思うぜ?」
「ふーん…?」
「マネージャーがやる事って言ったら‥部誌を書く事とか…試合の記録とか?あとは多分飯塚先輩が教えてくれると思うぜ?」
「うん、わかった…また琴乃先輩に聞いとくね?」
ワクワクしているのか莉音はとても嬉しそうに笑って返した。
「男子ばっかだからさー‥」
「ん?」
「あんまり‥その…」
「どうかした…?」
「いや‥」
“あんまりはしゃいで変な男にひっかかんなよ”
そんな言葉が喉まで出かかって一至は止まった。こんなセリフはまるでドラマや漫画で“ヒーロー”が言う事だ。
「友達、だろ?俺達」
そうしてやっと絞り出せたのはこの言葉だった。むやみに人の過去話なんて聞くもんじゃなかった。莉音が友達を小春以外に欲しがってるのを知っててつい、口が勝手に動いていた。
「──うんっ…ありがとう、高梨くんっ‥」
嬉しそうに笑う莉音が一至には胸を締め付けるような痛みを走らせた。助けてやりたい、友達になれるならなってやりたいそう思っていた。でもいざ、自分から友達だと口にしてみて何故自分はこんなにも残念がってるのだろうか。何故こんなに胸が苦しくなるのだろうか。
無情にも、1時限目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「じゃあ…教室に戻ろう?本当にさっきはありがとう、高梨くん…」
「お礼を言うのが好きなヤツだな、気にすんなって」
「でも‥嬉しかったから」
顔をほのかに赤らめて莉音は呟いた。それぞれがお互いに言えない気持ちを抱え始めた瞬間だった──
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