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「先輩“達”だなんて‥他人行儀にしなくてもいいのよ?」
「そうかもしれないですけど…一応、まだ部活の最中ですし」
「私と貴方の仲じゃない、もっと肩の力を抜いて?せっかくやっと二人になれたのにこれじゃあ盛り上がらないわ」
「何でまたそう…誤解を招くような──」
『ゴンッ!』
「…何の音?」
「──さあ…?ちょっと見てきます」
(──ど、どうしようっ‥)
莉音は話に動揺して思わず立ち上がった時に頭を思いきり柱にぶつけてしまった。今の会話の流れからすると一至が物音に気付いてこちらに向かって来るようだ。
(隠れなきゃっ──)
慌てて傍にあった植え込みの中に飛び込んだ。一至には見つからなかったようで、一至は柱の傍まで来ると辺りを見回してすぐにまた戻っていった。莉音は間一髪だった、とホッとして植え込みから出てきた。ふとリボンに目をやるとさっき飛び込んだ拍子に取れてしまったらしく、植え込みの枝に引っかかってしまっていた。
「あーあ…ほつれちゃってる‥」
リボンを枝から取ると莉音は溜め息を漏らした。
(あの会話じゃ‥まるで──高梨くんと琴乃先輩が…っ‥)
これ以上口にしたくなかった莉音は頬を膨らませた。最近自分を避けていた理由は“そういう事”かと思ったのだ。
――琴乃と付き合い始めたから“女友達”と関わってる暇はないという事だと思ったのだ。
「──なんか…イライラする‥」
頬を膨らませたまま莉音はズンズンと歩いて体育館に戻った。
「今日からコートのお仕事もやらさせてもらいます、葉山莉音ですっ…よろしくお願いしますっ」
コートに集まっていた2年生の補欠メンバーに莉音は自分でも驚く位はきはきと自己紹介した。莉音は髪の毛を結ぶのを諦めていつもの髪型に戻した。やがて休憩が終わり一至と琴乃は戻ってきたのだが体育館では別行動をしていた。一至は1年生の代表な為か他の1年生に指示をしに行き、琴乃は何事もなかったかのようにいつものように莉音に仕事の説明をし始めた。莉音は別行動をする二人が返って“付き合っている”というのをアピールしてるみたいに見えて何だか余計に胸が痛くなってイライラが収まらなかった。
「俺達がここからは説明するね?」
2年の代表である瀬戸翔太(せとしょうた)が莉音ににっこりと微笑んだ。
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