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「どういう…事‥?」
1人何も解らない莉音は首を傾げて呟いた。泣いていたせいか、少し目が腫れていて一至は胸が痛んだ。
「あの、さ…」
何から話せばいいかわからなくて、一至の頭の中はぐちゃぐちゃだった。自分はこの1週間何をやっていたのだろう。気付いてしまった気持ちを理由に莉音を避けた。既に自覚はしていたのだ。
――莉音を“好き”だという事を。
でも莉音が欲しがっているのは“恋人”じゃない。“友達”なのだ。自分の気持ちは伝えられない。彼女は自分を“友達”だと思って信頼してくれているのだから。
「高梨くん…?」
「──避けてて‥悪かった」
やっぱり最初に謝罪の言葉が出てしまうのは自分が悪かったと反省しているからなのだろうか。
「えっ?避けてたの‥?」
「は?」
「挨拶したらちゃんと返してくれてたから…てっきり私が嫌われちゃったのかなって思ってて‥あ、でも前みたいに話がしたくてもできなかったから…避けられてたに入るのかな‥?」
友人が小春しかいなかった為か、莉音の鈍さは計り知れなかった。“友達”から“避けられる”という行為が“初めて”だったからなのか、よくわかってなかったのだった。
(すっげぇ鈍い…のか?)
「変な事‥言ったかな…?」
「いや…全然そんな事ないよ」
「なら良かった…」
「あのさ──泣いてた理由‥聞いていい?」
「えっ?」
思いもよらない事を聞かれて莉音は顔を赤らめた。わけの解らない一至は首を傾げたまま先程賢人が座っていたベンチへと座った。なぜか手摺が折れていて、ますます首を傾げていたが。
「あの‥怒らないで…聞いてくれる‥?」
「ん?ああ」
「た、高梨くんって──こ、琴乃先輩と‥そのっ…」
肝心な所で上手く言葉に出来ない自分が情けなくなってくる。莉音はギュッと唇を噛み締めた。
「飯塚先輩と…何だよ?」
「──つ、つつっ…つ、付き合って‥るのっ…?」
「―――は?」
予想外の言葉に一至は思いきり眉を潜めてしまった。莉音は一至の反応を気にしているのか申し訳なさそうにしていた。
「いや、それは有り得ない…ぜっったいに有り得ない!」
「そう…なの?」
「だって琴乃先輩付き合ってる人──バスケ部にいるし」
一至の言葉に莉音は驚きを隠せなかった。
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