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“自分の気持ちに素直にならないとねぇー”と。莉音と取り残された時に確かにそう言っていた。――あれは自分に言ったのか、それとも琴乃に対して言ったのか。
「まああの2人はある意味ラブラブだから…いいと思うけどな」
「“らぶらぶ”って具体的にどうするの?」
「──え?」
天然鈍感人間の莉音にはよくわかってないようだった。
「(けん兄ぃがすっげードSだって言ってもわかんねぇだろうなぁ…それに振り回されてる飯塚先輩も哀れだけど‥それがあの2人の付き合いだし…)まあ…あの2人なりの絆みたいなのがあるから、さ?」
「何か‥参考にならないかなぁって思ったんだけどなぁ…」
「参考って?」
「小春にね、“アンタは恋愛に疎いから周りに経験ありそうな人の話を聞いてこい”って言われたの」
(余計な事を吹き込むなよ、アイツ…)
「でも私にはまだ早い話だし…まあいっか?」
「多少は‥気にした方がいいと思うけどな?」
「そうかな…?」
「ああ。──まあ…その内わかる時がくると思うぞ?」
ふと時計に目をやると既に10分が経過していた。
「そろそろ戻るぜ?練習に間に合わないと怒られるしな?」
「うんっ…わかった」
二人は仲良く話ながら体育館へと戻っていった。お互いに疑問を残したままで。
(結局葉山が泣いた理由ってなんだったんだ──?)
(私ってどうして高梨くんと琴乃先輩にイライラしたり泣きそうになったりしたんだろ──?)
体育館にはどうやら一至達の方が先に戻っていたようで、時間になっても部長が戻らない事から副部長が仕切る事になった。ちなみにこの日の練習は琴乃も賢人も結局戻って来なかった。ようやく練習が終わって一至はウォータークーラーの水を飲みに来た。
「けん兄ぃ…戻って来なかったけど‥飯塚先輩と誤解は解けたんだろうな‥」
「そうだといいね?」
「葉山…何でついてきたんだよ?」
ふと後ろを振り返るとちまちまと莉音が後ろからついてきていた。
「良かったら…一緒に帰ろうかなぁって思ったんだけど…ダメ、かな?」
「えっ?い、いや…ダメじゃないぜ?」
「ホント?じゃあ制服に着替えてくるから‥昇降口で待っててね…?」
「わかった、水飲んだらすぐ行く」
にこっと笑顔を見せると莉音はパタパタと踵を返して走っていった。
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