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(上品そうな子だな…何であんな所にいるんだ?)
つい、デバガメ心が芽生えて一至はまじまじとその女の子を眺めた。身長は一至より若干低い。でもそれに負けない存在感と雰囲気を持っている。肩につく程の長さのストレートヘアを緩く白いリボンに結っており、立ち姿だけでもどこか気品が漂っていた。よくよく見てみると真新しい制服で、胸ポケットあたりに“入学おめでとう”と書かれた造花のカーネーションが留められていた。これは受付の場所を聞けるチャンスの到来だ。あのカーネーションがあるという事は受付終了済みということ、一至はそれだけ理解すると女の子の傍まで行った。
「ねぇ、キミ!入学式の受付場所知らない?」
「──え…?」
その声に女の子は気付いて澄んだ声で一至に返した。かと思いきやすぐにパッとうつ向いてしまった。
「(な、なんだぁ‥?)あのさ、入学式の受付場所知らない?キミも新入生でしょ?」
「え、ええ…そう、です‥知って、ますよ…?」
「なら案内してくんない?もう受付終わったんだろ?」
「え、えっと…その‥お、終わってはいますけど‥」
うつ向いたままで歯切れの悪い返事を繰り返す女の子に一至はだんだんイライラしてきた。
「だーっ!はっきり言えよ、案内するのかしないのかどっちだ!?」
「きゃ…っ」
ぐいっ、と女の子の腕を引っ張ると女の子の顔がはっきりと見えた。ぱっちりした瞳、すらっとした鼻、でもあどけなさと幼さが残ってる顔付き。いわゆる“可愛い”と言われる類いの顔だ。そして頬から耳までが一気にかあっと真っ赤になっていくのを一至は見てしまった。とくんとくん、と自分の心臓の波打ちが早くなったのがわかった。
「何で…赤く?」
そして咄嗟に言葉を漏らしてしまい、一至はドクドクと早い鼓動の心臓を落ち着かせようと深呼吸しだした。
「ご、ごめんなさい‥わ…私‥極度の上がり症な上に…赤面症なんです‥だから初対面の人に会うとすぐにこうやって──赤くなっちゃって‥」
恥ずかしそうに呟いて女の子は戸惑ったように視線だけで一至を見た。
「い、いやこっちこそ…いきなり悪かったな?」
「いえ、はっきりと話せない私が‥悪かったんです」
「あのさぁ…アンタ俺と同い年だろ?何で敬語?普通にタメグチでいいぜ?」
「は…い、いえっ──うんっ‥」
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