梅雨の訪れは友情の終わり

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写真に映る父と母は柔らかな笑顔を自分に向けてくれている。自分1人が映っている写真を見ると、無邪気に笑っていて何だか微笑ましかった。 「私…何でこんな風になっちゃったんだろう‥」 幸せだった頃の記憶は鮮明に思い出せるのに、ただ“裏切られた”“仕事を取られた”というだけで両親の愛情が信じられなくなっていた。その両親が仕事で得た栄光から受けたイジメの件もあり、どんどん両親が自分の中で悪者になっていった。嫌いではない、だけど今更信じる事も出来ない。莉音の心の中は複雑だった。 「高梨、くん…私‥どうしたらいいんだろう…」 そっと写真を撫でながら莉音は呟いた。さっきの先輩の告白を聞いてから自分の中の“気持ち”がわからなくなっていた。 (高梨くんが“友達”って‥言ってくれたのに…何で苦しいの?どうして私は残念がってるの?ずっと欲しかった“友達”なのに──自分が1番…わからない‥私…恋愛感情って持ってるのかな‥) ベットに寝転んで莉音はギュッと枕を抱き締めた。ふと窓の外を見つめると雨がザアザアと降っていた。 「まるで‥私の心の中みたいだね…」 何だか切なくて涙が出そうだった。いつから自分はこんなに殻に籠るようになったんだろう、何故こんなにも消極的なんだろう… (──あ…私‥逃げるように帰ってきちゃったけど‥高梨くんに次会う時…どうしたらいいんだろう‥) 小さなため息を漏らして莉音は思った。このGW明けに1年生は学年行事で自然教室と称した“ハイキング”がある。それはクラスで行動しなくちゃならないので当然一至と顔を合わすだろう。その時どうしたらいいのだろうか。 (どんな顔して話せばいいかわかんないよ‥) 莉音の頭の中には一至が別れ際に言っていた言葉が何度もぐるぐる回っていた。 (高梨くんは…お友達‥だよ…でも──でも‥小春とは違う…私の中では“特別”だよ‥) 上手く説明出来ないもどかしさに莉音は枕に顔を埋めた。 この時の2人は既に“友達”だと言えない所まで気持ちが膨らんでいる事を知る由もなかった。 そうしてついに“ハイキング”の日を迎えてしまうのであった──
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