【悪夢の始まり】

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   その時言われたのは、生活に必要なお金を、自分一人の力で学業と両立して稼いでいけるのか、だ。  そんな自信など、真実にはなかった。  憧れの方が強く、当然のことながら、現実を突きつけられて、すぐに諦めたくらいだ。  それが今、一人暮らし以前に、住む場所がない現実に直面している。  朝までは、どこにでもある家庭の風景だった。  いってらっしゃいという言葉とともに母親に見送られ、こんな事態が待ち受けているなどまったく感じさせないくらい、いつも通りだった。  母子家庭で、大黒柱として遅くまで働く母親の代わりに家事をするのは真実の仕事だったし、一人には慣れてる。  学校が終わってまっすぐ帰宅して、ドアを開けた瞬間、そのいつも通りが一変した。 『は!?』  思わず、すっとんきょうな声を上げたのも無理はない。  ――今日から真実ちゃんのお家はココ。  リビングはもぬけの殻。  部屋という部屋に使っていたはずの物は影も形もなく、蛍光灯の紐に付けられた置き手紙だけが我が物顔でぶら下がっていた。
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