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友達の家を転々とするにも限界がある。
そうする理由を尋ねられたら、理解できるように答える自信がなかった。
「おい」
不意に公園の頼りない明かりに照らされた影がブランコの前に伸びて、真実は振り返った。
ほぼ同時、強制的にブランコの揺れを止めて、聞き覚えのある低い声が真実の鼓膜を震わせた。
「なっ…、あ……!」
思わぬところで直人と再開した真実は、驚きのあまり声を喉の奥に燻らせてその姿を見上げた。
「帰るぞ」
現状を受け入れていない筈の直人の口から、意外な言葉が出て、真実は瞬きを繰り返した。
「か…帰るって、どこに! あたしには帰る家が……!」
「俺ん家にだ」
深い溜め息をついて直人は短く言った。
本人たちの了承もなしに、同居決定の状況を作られたことを直人も納得していないはずなのに、受け入れたかのような言葉に、真実は眉間に深いシワを刻んだ。
「そこは、あたしの家じゃ…ない」
「じゃあ、どこに帰るんだ? 確かめたんだろ。もう帰れないって」
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