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自分一人の力ではどうしようもない状況を前に、真実の言葉は次第に詰まっていった。
「な、なんとかするわよっ!」
「なんとかって?」
受け入れたくなくて、強がってはみるけれど、突っ込まれると思っていなかった真実の頭の中は真っ白で、答えなど用意されていない。
納得させる答えが出てこなくて、俯いて口唇を噛んだ。
そんな真実を見下ろして、直人は、こいつも被害者だよな…と心の中で呟いた。
「とにかく、帰るぞ」
春とは言ってもまだ冷え込む。そんな寒空の下で議論を繰り広げてもらちがあかないと思いながら直人が手を伸ばすと、真実はそれを振り払い、意志の強い眼差しで直人を見上げた。
「なんで! 受け入れちゃってるのよ! 初対面で、その上、同居なんて納得できるわけがないでしょ! それにっ、なんでここがわかったのよ」
答えなければ、絶対について行かないと瞳で云いながら、真実は肩で息をしながら直人を睨み上げた。
それが正論であるし、答えなければ、はじまらないと、直人は短く息を吐いて、言葉を探した。
何から話したらいいのか、直人は躊躇う。
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