【口が裂けても言えない】

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   はじめに断っておこう。  二人は、赤の他人である。  兄妹でもない、親戚でもない。  血の繋がりなど皆無の、他人同士ダ。 『――2年A組、藤森、藤森 真実(フジモリ マミ)、至急音楽準備室まで』  昼休み、ざわめく教室に短く放送される声は、彼女にとって悪夢の時間の始まり。 「うわっ、またきた」  真実は渋い顔で呟いた。 「毎日お熱いコト。早くダーリンの胸に飛び込んでらっしゃい」 「誰がっ、ダーリンだ。マジ勘弁して」 「はいはい、委員長なんだから仕方ないでしょ。さっさと行った行った」  邪魔者を追い払うように手を振って、高沢今日子(タカザワ キョウコ)は残り一口の弁当のおかずを口に運んだ。 「あーんなカッチョイー先生に呼び出されることの何が不服なんだか……」  すでに教室を出た真実に、今日子の声は届いていない。  呼び出されたと言っても、ただ採点の終わった小テストを受け取りに行くだけなのだが……。  だが…――。  
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