【悪夢の始まり】

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   約二ヶ月前…――。  それは悪魔からの電話と言っても過言ではないだろう。 『息子よ、生きてるか』 「生きてなきゃ電話に出ねぇよ」 『それもそうだ。忙しいので手短に言う。親友の娘さんを預かることになった。話はついているから、宜しく頼む』 「は!? 宜しくって、実家なら面倒見ようが……」  反論の言葉も待たずに、電話は切れ、訳がわからないまま直人は携帯を見つめた。 「今の、親父さん?」  久しぶりに会った親友の声に、直人は携帯を閉じて座り直した。 「親友の娘を預かることになったから宜しく、だとよ。俺にどうしろって……」 「あっはっはー、親父さんサイコー。ある日突然、突拍子もないこと言うの変わってなーい」  静かな喫茶店中に響くくらい大笑いする鹿角 晴希(カヅノ ハルキ)を睨んで、直人は煙草に火をつけた。 「笑い事じゃねぇぞ…ったく……」  確かに、笑い事ではないけれど、実家に帰ることがあれば、まぁ、顔を合わすことくらいあるだろうと、直人は父からの電話を軽く流した。  が、しかし!  これを悪夢と呼ばずして、何を悪夢と呼ぶのだろう。  目の前に、段ボールの山。
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