490人が本棚に入れています
本棚に追加
約二ヶ月前…――。
それは悪魔からの電話と言っても過言ではないだろう。
『息子よ、生きてるか』
「生きてなきゃ電話に出ねぇよ」
『それもそうだ。忙しいので手短に言う。親友の娘さんを預かることになった。話はついているから、宜しく頼む』
「は!? 宜しくって、実家なら面倒見ようが……」
反論の言葉も待たずに、電話は切れ、訳がわからないまま直人は携帯を見つめた。
「今の、親父さん?」
久しぶりに会った親友の声に、直人は携帯を閉じて座り直した。
「親友の娘を預かることになったから宜しく、だとよ。俺にどうしろって……」
「あっはっはー、親父さんサイコー。ある日突然、突拍子もないこと言うの変わってなーい」
静かな喫茶店中に響くくらい大笑いする鹿角 晴希(カヅノ ハルキ)を睨んで、直人は煙草に火をつけた。
「笑い事じゃねぇぞ…ったく……」
確かに、笑い事ではないけれど、実家に帰ることがあれば、まぁ、顔を合わすことくらいあるだろうと、直人は父からの電話を軽く流した。
が、しかし!
これを悪夢と呼ばずして、何を悪夢と呼ぶのだろう。
目の前に、段ボールの山。
最初のコメントを投稿しよう!