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帰宅した直人を待ち受けていたのは、松河引越しセンターと印刷された段ボールだった。
一瞬、部屋を間違えたかと思ったが、リビングに広がる景色は見慣れたものだった。
誰のかもわからない荷物を除いては……。
「…っんだこれ!!」
認識するのに随分と時間がかかってしまい、溜めに溜めた声は部屋中に響いた。
「あはははは! 宜しくって、お前に言ってたんだ。親父さんやるなー」
事の状況は理解しているが、受け入れることができない直人の横で、晴希が腹を抱えて笑っている。
「オヤジ! どういうつもりだっ」
直人が抗議の電話をしたのは、言うまでもない。
『あぁ、荷物は無事届いたみたいだな。もうすぐ同棲相手の真実ちゃんが来る筈だから、甘い生活を楽しみたまえ。じゃ』
「オヤジ! 質問に答え……」
一方的にまた電話を切られ、直人は腹の底から沸き上がる怒りを傍の段ボールにぶつけた。
その時、
ピン…ポン。
躊躇いがちに鳴ったベルに反応して、直人は玄関に目を向けた。
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