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「誰だよ、こんな非常事態に……、はい、どちらさ……」
溜め息混じりに言いながらドアを開けると、そこに瞬きを繰り返す少女が立っていた。
「え…、お、男の人……? ここ、東さんのお宅、ですよ…ね……」
「はい、東さん家ですけど」
直人を見上げながら、少女――藤森 真実(フジモリ マミ)は肩越しに積み上げられた段ボールの山を凝視した。
「ちょ…、ちょっと失礼しますっ」
直人の返事を待たずに、真実は靴を脱ぎ捨て、山積みになった段ボールの一つをこじ開けた。
直人はドアを閉めると振り返り、慌てた真実の様子を伺っていた。
「ここ、東さんのお家で間違いないんですよね」
静かに箱を閉じ、振り返らずに真実は問いかけた。
「さっき、そう言いましたケド」
その驚きと落胆ぶりで、ここに来るまで事のあらましを知らされていなかったのだろうと、直人はゆっくりと答えた。
「……お母さんっ! どういうことっっ」
ポケットから携帯を取るなり、真実は叫びだした。
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