Ⅰ.賞金稼ぎの一味

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「賊退治にあたって、村長さんに少し頼みがあるんだが」 「なんだね?」  襲われているのは自分の村だ。可能であれば手助けくらいはしたい。 「若い衆を数人、館に近い浜に待たせておいてもらえるか? 館の住人が人質にとられてる。ナツが外まで逃がすから、そこの広場まで誘導してほしいんだ。後は、念のために広場の守りを固めた方がいいだろうな」  それから、と、彼は顔の前で人差し指を立てる。 「明るくなるまで広場を出ないこと。特に館の周辺には絶対に近づかないよう、皆に伝えてくれ。――決行は真夜中だ。賊の相手は俺たちに任せろ」  少し考えた末、ポールは頷いた。 「よし、分かった」  これで、青年団の連中にも仕事が出来る。後は彼らの仕事が無事に成功することを信じて、朝まで待つしかあるまい。  ポールは立ち上がり、そしてふと振り返った。 「ナツ君はどこに行ったんだろう?」  既に日は落ち、よく晴れた空には星が出ている。長い夜が始まろうとしていた。 「その辺で弓の具合を確かめてるんだろうよ。もし木に穴でも開いてたら、勘弁してやってくれ」  焚き火の赤い光に照されて、ゲンは彼に、拝む真似をして見せた。
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