Ⅰ.賞金稼ぎの一味

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   暮れかけた空に、非常を告げる半鐘の音が鳴り響いている。  役場の前の広場には篝火が焚かれ、村中から避難してきた人々の不安げな顔を照らしていた。  持てるだけの荷物を背負い、家族や近隣の者同士で寄り添い合う彼らは決して大声で騒いだりはしない。しかし不安と恐怖を少しでも和らげようとするための話し声は絶えることがなく、広場全体が騒然としている。  その混乱の中を、ポールは人捜しのために駆けずり回っていた。   「村長!」    後ろから大声で呼ばれて振り返ると、人を掻き分けるようにして逞しい壮年の猟師が近付いてくる。青年団の団長のビリーだ。   「こっちは全員集まったぜ。武器も揃えたし、日が暮れる前にやっちまいましょう」   「ああ、いやちょっと待て。それよりあんた、リョーを見なかったか?」   「リョーさん? いや見てねえが……おい、村長!」    指示するまで待機だと言い捨てて、彼は今にも後を追ってきそうなビリーから離れる。  今は青年団よりも、リョーを見つけ出すことの方を優先しなければならない。    近海の海の幸と、あまり豊かではない土地の農作物で生計を立てる小さなこの村が海賊に襲われたのは、つい先刻のことであった。
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