~手~

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1997年の春。 パソコン関係の仕事をしたくて今年の春に大学に入学した。 家から大学に通うには隣の県から移動をしないといけなかったため、独り暮らしを決意した。 生活費は実家から仕送をしてもらい学費は学費支援制度で毎朝新聞配達をして賄っている。 僕の大親友はとっくに独り暮らしを始めていてそいつが言うには独り暮らしは楽しい、と言っていたけれど僕にとっては毎日が精一杯だ。 だからそろそろアパートを更に安い所に引っ越そうと思っている。 やはりお金には敵わない事もある。 それから一ヶ月後新しいアパートに引っ越した。 少し古いアパート、畳み八畳と台所にトイレの着いた部屋でこの部屋だけが家賃が2万円でガス共に電気が無料と言う学生にはと言うよりそんないい部屋を借りれた僕はラッキーだった。 ただどうしてこんなに条件のいい部屋に誰も借りようとしなかったのかと大家に訪ねて見ても「みんなすぐいなくなる」としか言わなかったから僕は多分すぐみんな忙しいのだろうとしか考えなかった。 でもこれが、後々僕を苦しめる事になるとは思わなかった。 「えっと、高凪 晴行(たかなぎ はるみち)さんね…」 「あ、はい」 管理人に部屋を案内される。 「えーっと君の部屋はここ、201号室だね」 ガチャリっ ギギギ…とドアの軋む音が響く。 ドアノブも少しガクガクしている。 「あれれ…しまった」 「?」 管理人は部屋を見るなり頭をポリポリとかいた。 部屋を覗くと納得いく、前の住居人らしきゴミがそのままだった。 「まったく…片付けもできんのか」 「…はは」 それには納得いく。 管理人とまず部屋の掃除から始まった。 でも不思議だったのは部屋の隙間と言う隙間に赤いガムテープが貼りめぐられていた。 テレビにパソコンに冷蔵庫やら洗濯機までガムテープ。それに部屋から突如いな状態になったみたいに。 「お、ビールがあるじゃないか、どうせ帰ってこないんだしもらうか」 冷蔵庫から缶ビールを取り出すなりそれをゴクゴクと飲みだした。 「ここの人何かあったんですかね」 「わからんね、毎度ここの部屋のやつらはいなくなるし、荷物はそのままだし、汚くされるしいい迷惑さ」
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