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鉄狼は李弘のそんな様子に気づいたのか、馬の速度を落とし、李弘と並んで進む形となった。
李弘はまだちょっとためらったが、しばらくして口を開けた。
――もっとも鉄狼に言いたかった言葉。
「俺は…人を殺した…」
鉄狼は厳粛な顔をしながら頷いた。
「俺は…人を殺したんだ」
李弘の声が大きくなる。
しかし、鉄狼はそれにかまわず、うなずくだけだ。
「俺は人を殺したんだよ!」
李弘は叫んだ。
「恐いか?」
鉄狼はついに口を開いた。
李弘は首を振る。
「俺は人を殺したのに、何も感じなかったんだ。
しかも、俺は殺す前からどうすれば相手が死ぬか知っていたみたいだった…。
なあ…俺は以前は何をしていたのかな?」
鉄狼は李弘をじっと見つめた。
「刺客――
将軍はお前は刺客だとおっしゃったよ」
李弘は一瞬自分の中で何かをつかんだような感覚におちいった。
刺客――
李弘はこの二文字の言葉に何か懐かしいものを感じた。
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