初陣

4/17
394人が本棚に入れています
本棚に追加
/404ページ
鉄狼は李弘のそんな様子に気づいたのか、馬の速度を落とし、李弘と並んで進む形となった。 李弘はまだちょっとためらったが、しばらくして口を開けた。 ――もっとも鉄狼に言いたかった言葉。 「俺は…人を殺した…」 鉄狼は厳粛な顔をしながら頷いた。 「俺は…人を殺したんだ」 李弘の声が大きくなる。 しかし、鉄狼はそれにかまわず、うなずくだけだ。 「俺は人を殺したんだよ!」 李弘は叫んだ。 「恐いか?」 鉄狼はついに口を開いた。 李弘は首を振る。 「俺は人を殺したのに、何も感じなかったんだ。 しかも、俺は殺す前からどうすれば相手が死ぬか知っていたみたいだった…。 なあ…俺は以前は何をしていたのかな?」 鉄狼は李弘をじっと見つめた。 「刺客―― 将軍はお前は刺客だとおっしゃったよ」 李弘は一瞬自分の中で何かをつかんだような感覚におちいった。 刺客―― 李弘はこの二文字の言葉に何か懐かしいものを感じた。
/404ページ

最初のコメントを投稿しよう!