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その時、草原の上に角笛の音が響き渡った。
追っ手が現れたのだ。
慕容風は矛を掲げ、大声で叫んだ。
「せん滅しろ!」
三十数人の騎兵はすぐに声をあげて一列に並び、まだかなり遠くにいる追っ手を向かい討つ準備をした―。
双方の距離は縮まりつつある。
およそ200メートルほどの距離になった瞬間、列の中央から角笛の音が響き渡った。
李弘の左側に位置している鉄狼が叫ぶ。
「弓用意!」
李弘は緊張の余り、弓を落としそうになった。
幾度かの修羅場はくぐってきたものの、彼のたった数ヶ月の記憶の中で、これが初めての戦場である。しかも生死をかけた。
一瞬の緊張の後、鉄狼の日頃の教えが蘇る。
李弘は体に染み付いた弓矢の準備動作を素早く行い、目標に狙いを定め、発射の合図を待った。
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