――天国の狭間で。

3/4
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
  「…ねぇ、たぁちゃん」 「んー?」 風が、頬を撫でた。 「…りょうくんは、あたしが殺したの?」 酷く落ち着いた声色と、その発せられた言葉に飛び起きた。 「お前、何言って…」 僕は息をのんだ。 桜の中にいる少女の横顔が、あまりにも綺麗で。 「りょうくんがくれた風船。たぁちゃんがくれたネックレス…」 嬉しかったよ、そう言って笑った少女の頬は濡れていて。 「違う…違うんだ、お前のせいじゃない、ユウは悪くないよ」 その言葉を聞いて、少女は強く唇を噛む。 俯き加減のまま、必死に笑顔を作ろうとしているのに。 その涙は止まることを知らなくて。 「ありがとぉ、たぁちゃん……」 ずっとずっと怖かった。 私が消してしまった、自分と同じくらいの小さな命。 あの、楽しそうに笑っていた兄弟を。 貴方の大事な弟を奪い、貴方から笑顔を消しさったのは私なんだと。 凄く、苦しかったんだ。 ―――あたしは、りょうくんに会っても良いんだよね? 「ユウ…?」 風が、風が。 生暖かく僕らを包む。 舞い上がる花びら 薄紅色の幻想。 .
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!