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「…ねぇ、たぁちゃん」
「んー?」
風が、頬を撫でた。
「…りょうくんは、あたしが殺したの?」
酷く落ち着いた声色と、その発せられた言葉に飛び起きた。
「お前、何言って…」
僕は息をのんだ。
桜の中にいる少女の横顔が、あまりにも綺麗で。
「りょうくんがくれた風船。たぁちゃんがくれたネックレス…」
嬉しかったよ、そう言って笑った少女の頬は濡れていて。
「違う…違うんだ、お前のせいじゃない、ユウは悪くないよ」
その言葉を聞いて、少女は強く唇を噛む。
俯き加減のまま、必死に笑顔を作ろうとしているのに。
その涙は止まることを知らなくて。
「ありがとぉ、たぁちゃん……」
ずっとずっと怖かった。
私が消してしまった、自分と同じくらいの小さな命。
あの、楽しそうに笑っていた兄弟を。
貴方の大事な弟を奪い、貴方から笑顔を消しさったのは私なんだと。
凄く、苦しかったんだ。
―――あたしは、りょうくんに会っても良いんだよね?
「ユウ…?」
風が、風が。
生暖かく僕らを包む。
舞い上がる花びら
薄紅色の幻想。
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