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その日はただ、少し。
ほんの少しだけ、
機嫌が良かったから。
小学1年になる弟の涼を連れ、街の中心部まで訪れた。
当時の僕は中学1年。
貯金していたお年玉を使い、欲しかった新型のゲーム機を買って、それでもまだ少しだけ余裕があることに気付いた僕。
まあ――たまには兄らしいことでもしようじゃないかと。
安いおもちゃを一つだけ買ってやり、二人でクレープを食べたばかりだった。
弟の手には、
店で貰った特典の風船と。
――僕が買ってやった、
塩化ビニール製の人形。
"ヒーロー人形"
と言えば、大体の想像はつくだろうか。
男の子であれば、大抵の子は一つや二つ持ってたりする、あれ。
それを大事に抱え。
片手には風船。
弟もまた、上機嫌だった。
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