COMES OUT

5/7
前へ
/35ページ
次へ
『はい もしもし、ヒカリ興業 ……ああ、昨日のべっぴんさん。 私、三咲ですよ。 話?もちろん。 今から。 あぁ、結構ですよ。 駅の裏手の麻雀屋の二階です。 窓に金色の文字でヒカリ興業って、でっかく書いてますから。 ハイハイ、お待ちしてます。 彼女、大金持ちになれるよ。』 電話を切った三咲は興奮しながらラークに火をつける。 ソファーにどっかと腰をおろし、向かいに座るケイゴにせきたてる。 『上物スカウトしたよ。 これから、来るって。明日、早速撮影やな。』 『何処の売女?』 『それがよ、まだ十代の生娘だわ。俺の見たとこ。 それも、この街の娘。』 『まじっすか?気がのらねえな…』 ケイゴは空の煙草を丸めた。 『また、俺の仕事にケチつける気? おめぇは黙って、腰ふってりゃええんよ。』 『三咲さん、あんたうちの親父に仕事まわしてもらって、しのいでんじゃねえの?』 苦々しく足をテーブルに投げ出し三咲が答える。 『ああ。親父さんには頭あがんねえよ。 おめえじゃねえよ、 親父さんにな。 まして、いっちゃわりいが、今、組離れてる親父さんの医者代みてんの、ほとんど、俺だぜ。 感謝されてもごちゃごちゃ言われる筋合いはこれっぽっちもねえよ。 代継がなかったてめえになんか、なんも言われたくないんよ。 立派な実子君。 大人は大変なんよ。』 『ちっ…』 ケイゴが扉に向かう。 『すねてんじゃねえよ。ガキが。 銭がいるんだろうが。文句言ってる暇があるなら、風呂いって、あそこ綺麗に洗っとけよ。実子君。』 ケイゴはソファーを蹴り倒して部屋を出た。 階段を降りる途中、少女と目があった。 『あんた、電話の?』怯えた目をした少女は答えた。 『はい』
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加