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衝動的に少女の手をひいて、運河沿いの公園に来たケイゴ。
恐怖で声も出せず、連れて来られた少女は、目一杯のお洒落のつもりらしい小学生の学芸会よろしくの、ピンクのワンピース姿。
『くくくっ…』
『何が可笑しいんですか?』
ケイゴのいきなりの笑いに、恐怖心にも勝る苛立ちが、悦子に口を開かせた。
『いや、わりぃ。
馬鹿にしたんやないんや。
でも、お嬢ちゃん、歳いくつ?』
『十六です。』
『何処の幼稚園かと思ったよ。』
ケイゴは笑った。
『失礼ですね。あなた一体なんなんですか?』
『あっ、俺?
ケイゴ。
裏ビデオ男優。
そして、君は明日から裏ビデオ女優。』
悦子は唖然とした。
話が噛み合わない様で噛み合ってしまう。
『うそ…』
『ほんま』
『だって…
だって私、昨夜一晩中散々考えて決断したのに…。』
みるみる悦子の瞳に涙が溢れた。
『参ったな…
お嬢ちゃん泣くなよ…端から見たら俺が泣かしてるみたいやん。』
『あなたが、泣かしたんじゃないですか。
馬鹿。』
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