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『久々っすね!
紫のハイウェイ』
紺色の特攻服に白いどたぐつ姿の文太がGSを蛇行させながら、倉田に叫ぶ
『えっ…何?』
KHの独特の排気音で聞こえない。
『やかましい単車ですね。
これからの族、もうちょっと、お洒落にいきましょうや。』
『うるせぇ、てめえだって、マフラーちょんぎって、時代錯誤もはなはだしいやんけ。』『あーっ言いましたね!俺の単車欲しいなんて奴、ごまんといるんすからね。』
『そんな、亀みたいな単車をか?』
倉田は笑いながらスロットルをひねった。
海岸線の国道は南北に二十キロにも続く。
ついさっきまで《悪霊》の四十台ほどの大パレードをした帰りだ。
朝日が昇るわずかの時間、世界が紫に染まる。倉田はこの時間が大好きだ。
この世界を見るために、一晩中走ってると言っても、過言ではないだろう。
暗闇に目を凝らして、手探りで、探り当てたのが、この紫。
そんな気分だ。
『おい、文太』
倉田は道路側のドライブインを指差した。
『了解』
文太は親指を立て減速した。
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