6人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
『オメェよ ひつこいべ
此処にはそういう格好でくんなっていうてるやろ』
赤いマフラーを整えながらトミーが洋一を見下ろす。
『歳三ちゃん、ごめんね。だって歳三ちゃんが来てくれないから僕寂しくて』
『何が僕だよ。
兄貴んとこには顔だしたか?』
『いんや。行けばまた説教くらうべ?
学校辞めてうちでてから、僕は行方不明の少年なんですよ』
けけけっと笑いながらラジカセのプレイボタンを押すフルボリュームでStranglersの『No More Hero』が響く。
『なんすかトミーさん?もめちゃってんすか?このコキタねえコジキと』
赤と黒のボーダーシャツに皮パン姿の男が洋一と歳三の間に入った。
『エエんや。俺の客やねん』
『それにしては行儀悪いガキっすね』
洋一の顔に男の顔がこれでもかと近づく
洋一は笑顔で問う。
『お兄さんお年はいくつですか?』
『十七だよ!それがどうし…』
いいかけた男の鼻先に激痛がはしる。
洋一の額が男の顔の中心にめり込んだ。
『年下いじめてんな
ボケ』
ボストンバックサイズのラジカセがうずくまる男の背中に振り落とされた。
『バカヤロウ 洋一逃げろ。こんなけの人数俺にも抑えきれねぇ。』
洋一が顔をあげると歳三の背後からリーゼント軍団が鬼の形相で走ってくる。
『あちゃ~こりゃ死ぬわ。じゃ歳三ちゃん、ダックテールで待ってるわ』
ラジカセを肩にかつぎ洋一がきびすを返す。
大勢の怒号にまじり、歳三の声が聴こえた。『親父さん、だいぶ悪いらしいぞ』
Boys『First Time』が耳元で鳴り響く中でも、その嫌な情報は確かに聴こえた…
最初のコメントを投稿しよう!