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二人はそうしていつまでも笑い合っていた。
「…ハァ…、まぁでも、俺らもよく兵隊なんかになれたよなァ。子供の頃からずっと憧れててよォ。」
先に笑い疲れた赤星が話を振った。
「…あぁ、確かになァ。小さい頃からの幼馴染みだったよなァ、俺ら。普通に兄弟みたいだったよなァ」
黒瀬がしみじみと呟く。
「どっちが兄ちゃん?」
「俺ぇ♪俺の方がケンカも飛行機の技術も凄げェしィ。」
赤星が黒瀬の言葉にピクッと反応する。
「そいつは聞き捨てならねェな…。中尉の俺が小尉のお前より運転下手?テメェの方がケンカ強いだと?」
「お、何だ?闘るか?弟よ♪」
「後で吠え面かいても知らねェぞ」
「あぁ、いたいた!先輩~!」
「中尉殿~」
不意に後ろから声がし、二人共振り向くと、隊員の後輩や部下達が笑いながら駆けて来た。
「どうした?緊急出撃か?」
「違いますよォ。せっかくなんで一緒に弁当食べましょう。それにお酒も少し手に入りましたよ♪」
皆、自分達のそれぞれの弁当を差し出した。
「何でェ、驚かせやがって…」
赤星が溜め息をつくと、黒瀬が叫んだ。
「よぉし、皆で飯食うかァ!」
「お、おい、黒瀬…!」
赤星がハッと慌てた。多人数での行動は嫌らしい。
「まぁまぁ♪」
「まぁまぁって…」
黒瀬が赤星の肩を叩くと、座り込み、再び弁当を食べ始めた。皆もすでに弁当を開き、雑談にお互いが笑い合っている。
「…ったく…」
赤星はしぶしぶ座り込んで再び弁当を食べ始めたが、自然と自分の顔に笑みが浮かんでくるのに気付いていなかった。
今日も憩いの場に、羽を休める男達の…下品な、しかし陽気で楽しげな歌が響き渡る…。自分達の最期の運命を分かっているはずなのに…。だが決して、彼らはただ、この時の楽しい時間をひたすら笑い合っていた…。
命ある限り、その人生を楽しまないともったいない…。
彼らはただその事を分かっているだけ…。
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