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―隊舎
隊員達が寝泊まりし、ほとんどの生活を共にする、現代的には寮のようなものだ。
黒瀬が飛行長を怒らせた日の翌日。黒瀬と赤星の部屋にはまだ軍服に着替えてない黒瀬と赤星の二人…
「はァ!?あんだけ怒らせといて!?」
赤星が飲んでいた水筒のお茶を吹き出した。
「うん。見送りになっちゃった…のかな?」
二段ベッドの上から見下ろして黒瀬が言う。
「………?どういう事だ…?」
「いやね、ウチらの飛行機、ほとんど全滅に近い状態だったじゃん?仮にも俺少尉じゃん?そんな状態で、死刑とかにして一人でも欠かす事は戦力に大きな打撃を自軍に与える事になるから出来ないって…。」
黒瀬は自分の水筒のお茶を飲んだ。
「マジかよっ…!」
赤星が悔しそうな顔をする。
「だったら俺も目一杯悪口言ってやるんだったな…!くっそー…。」
そう吐き捨て、赤星が二段ベッドの下に腰を下ろす。
「………まぁでも、それだったら飛行長の野郎、相当キレてただろうなぁ!」
赤星が黒瀬を見上げて言う。
「そりゃあもう!見送りって聞いたら顔真っ赤にさせて、しまいには拳銃取り出して『こんな軍なんぞブチ壊してくれる!』とか言って拳銃乱発しやがってよぉ…!部下に取り押さえられてたぜ!」
黒瀬が微笑しながら言った。
「はっ!馬鹿だねぇ、あの野郎も。」
微笑みながら赤星が呟いた。
「でもさぁ、俺らこれからどうなるんかねぇ…。俺らの飛行機ほとんど壊滅状態だから俺らの隊員全部に特別休暇出したらしくて、しばらく出撃はなさそうだし…。」
黒瀬がタバコに火を点け、煙を吐きながら呟いた。
部屋にしばらく沈黙が過ぎる…。
先に声を出したのは赤星だ。
「………だったらよぉ、久しぶりに町に戻ってみねぇか?」
「町に?」
黒瀬が赤星を見下ろす。
「おう。久しぶりに家族に会ってみたくなってさぁ。」
「………。でも…俺は…。」
「………あぁ、悪りぃ…。」
黒瀬がうつむくと赤星は慌てて窓の向こうを話を誤魔化す様に見た。
また沈黙が流れる…。
黒瀬のタバコの灰が床に静かに落ちた。
「………分かってたはずなのに………悪りィな…」
赤星が窓の向こうを見続けながら呟く様に言った。
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