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隊舎を出て30分ほど路上に沿って歩くと、黒瀬と赤星が生まれ育った故郷の町、゛夕日町゛が見えてくる。
木造の住宅街に包まれて子供達がチョークで道路に落書きをして遊ぶ風景はいつもの事だ。
「久しぶりだなぁ。町に帰って来るのは。何日ぶりだ?」
「えっと…この間帰ったのは6月下旬のおふくろの誕生日だったから…約1ヶ月ぶりかな。」
道路で遊ぶ子供達を眺めながら、黒瀬と赤星は横に並んで歩いていた。
「あ、兵隊さんだ!」
「兵隊さんこんにちはー!」
子供達が黒瀬達に気付くと、元気な声で声をかけてきた。
黒瀬は微笑みながら手を振る。すると、赤星が悲しそうな顔をしてうつむいた。
「………あの頃は本当に良かったなぁ…。今のこの世界の事を何も知らないまま無邪気に笑い合っていて…俺達の運命も知らないままで…。」
赤星が子供達を見続けながらふと呟いた。
「まぁ確かにな。でも子供はそんな事知らなくてもいいんじゃねぇか?子供はただ遊んで、元気に育てばいいんだよ。俺達の運命なんて知った所で邪魔になるかも知れねぇ。」
「………そうだな…。」
赤星が悲しそうな顔で答えた。
「…でも、俺達が居たって事も知っていていいんじゃねぇかな…。」
「………もうちょっとでかくなれば、誰かが教えてくれるだろ。今はまだ早ぇんだよ!」
「痛てっ」
黒瀬が赤星の尻に回し蹴りを喰らわせた。
「………そっか、そうだな…!」
赤星は笑いながら自分の尻をさすった。
二人は笑い合いながら、赤星の実家へと足を進めた。
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