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ウィルスは二人の前に行くと、構えていた剣を下ろした。
明らかに怒っている。怒らないわけがない。
「君たち! 僕を侮辱しているのかい?!」
「あ、すいません」
だらしなくネクタイを緩めるカインが、へらへらと笑いながら言った。
ウィルスが先輩だと知らないのだろうか、という態度だ。
カインはゆっくりと立ち上がると、アミティエを起こした。
「き、君たちはッ!!」
そう言うと、ウィルスの剣が振り上げられ、アミティエに向かって一閃しようとする。
大剣とは思えない速度で、横一文字に刃が走った。
瞬間、キンッと耳障りな金属音が響く。
「……やる気がでたかい」
「元からありますよ」
カインが絶えず笑顔で言葉を紡ぐ。
その手には、同様に大剣が握られている。
「じゃあ、やろうか」
「アミティエ、行くよ」
アミティエは頷くと、黒い手袋の上からつけた指輪を掲げた。
指輪に刻まれている文様が光輝き、アミティエの背中に――翼が生んだ。
「は……なんだあれっ!?」
唐突すぎて目を疑ってしまう。
指輪が輝いたかと思えば、急にアミティエが妖精のようになってしまったのだから。
驚くラスターに、レイナが見慣れたふうに答えた。
「あれは指輪にエンチャントって言う付加をしてるのよ」
「エンチャント……、付加?」
「ええ。例えば、指輪に炎のマナを込めているとかね。リリスの銃弾と同じよ」
「でも羽ってのは……?」
「あれはモンスターの羽を付加していると聞いたわ」
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